寄生虫 (2000年1月29日) 

 ワイドショーで見たのだが、皮膚ダニと言ったか、顔の汗腺に住む虫がいるらしい。街角調査では、15人中14人とかの確率で、一人の顔に数百万匹だと言っていたような気がする。夜行性で、夜になると皮膚の表面に出てくるそうな。冬の乾燥した空気が遠因で、対策は、朝しっかり顔を洗うことが大事とか。

 寄生虫。想像するだに気持ち悪いが、一方で人間も所詮は地球に寄生した生物に過ぎない。

 学生時代に読んだ立花隆「文明の逆説」に面白いことが書いてあった。地球は生物であると、どこかの学者が主張しているそうだ。比喩ではない。本物の生物体だと主張しているというのである。そうなるとマグマは内臓の活動で、火山は排泄行為なんだろうか。

 「文明の逆説」には、ラットの実験結果も報告されている。ラットを超過密状態にして飼育すると、3代目だか4代目あたりで異変が生じる。子育てを放棄する親、未成熟のメスを犯そうとするオス、オスを犯そうとするオス。まるで人間社会そのものだ。そして、これらの現象は、全て子孫を残さない方向に作用する。

 同じように、人間社会ではときに未知の全く新しい伝染病が流行するが、それは、過密状態になった人間の数を調整しようとしている自然の摂理ではないかという説もある。そう考え始めると、戦争が起こるのも、精子の数が減っているのも、交通事故も、思い詰めて人を殺す行為も、全て自然の摂理。人口を増やさないため・・・。

 だからといって、戦争を肯定するわけでも、事故対策が必要ないわけでもない。病気を放置すべきでもないし医学の進歩を止めるべきでもない。人間社会というミクロと、地球環境というマクロでは視点が違うと言いたいだけである。だから、人間社会と地球環境のバランスを見つけようというのが環境保護だと理解している。

 異常発生したネズミはいずれ集団自殺するというが、人も集団自殺に向けて着々と歩を進めている。環境保護が成果を上げなければ、戦争によって集団自殺をせざるを得ないか、さもなくば、地球が顔を洗うように人を全て殺してしまうことにもなるだろう。結局のところ、私も、ただの寄生虫の1匹に過ぎない。そんなことを最近、よく考える。

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© 2000 Takashi INAGAKI