男たちの旅路 (2000年1月23日)
週刊文春の情報ページで、「男たちの旅路」のビデオが発売されることを知った。1970年代後半に放送されていた一話完結のNHKドラマである。発売されるのは3本。そのうちの「非常階段」が確か、第1回の放送タイトルだったと記憶している。桃井かおりという役者を、そのドラマで初めて知った。脚本、山田太一。鶴田浩二が主役だ。
ガードマンである鶴田浩二は、過去に訳ある影を持って、水谷豊扮する若いガードマンやそのほかの登場人物と衝突する。説教もし、独り言のように自分の生き方を語る。ディテールは忘れたが、鶴田浩二は、いつも何かを語っていた。その話が悲しくもあり正論でもあり、心を揺り動かされる力を持っていた。ドラマの中で他の登場人物に対しても、私に対しても。
社会に出て以降、ここ12年ほど特にテレビドラマは見なくなった。あるとき知人から、絶対に見るべきだ、と薦められて「東京ラブストーリー」を、ビデオを借りて見たのが記憶にある程度。それでも大学時代は「ふぞろいの林檎たち」に熱中した。大学生たちが恋や生き方や就職に悩むドラマだ。確か、これも脚本は山田太一。同世代の学生として共感した。
ドラマは見ないがNHKスペシャルやニュース番組はよく見る。平日は、帰宅していればニュースステーションとニュース23をはしごして、ニュースジャパンに行って、BSのニュースまで夜はニュースばっかりだ。最近面白かったのは、ニュースステーションの久米宏による大橋巨泉へのインタビュー。巨人批判やテレビ批判。
大橋巨泉が言う。民主主義とは、自由、平等、そして正義だ、と。今の日本は自由で平等ではあるが、正義がない、と。
「男たちの旅路」ビデオを知った文春だか新潮で、山田太一氏のインタビュー記事があった。同じことを言っている。今のテレビには正義がない、と。
大橋巨泉の番組に正義があったとは思わないが、山田太一の番組には正義があった。鶴田浩二がドラマの中で語っていたのは正義だったんだと思う。あの中学から大学の頃、見事に影響を受けたはずの私の行動は今、正義に基づいているのだろうか。「男たちの旅路」のビデオ、買おうかどうしようかと迷っている昨今である。
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© 1999; Takashi INAGAKI